カニが泡ふくときは、あわててるときやない。息が切れて死にそうなときや。
私らアカテガニは、基本的にはエラ呼吸で、体内の水を循環させ、そのなかの酸素を
吸うてるねん。
だから、たまに水分補給してやらんと、体内の水がネバついて泡になるねん。
というてもずっと水につかってたら、溺れるし、ナンギなカニやわ。
しゃあないから、海近くの森や石のすき間で暮らしてんねん。
秋の満月の夜は海に「せーのぉ」で下りて行って、海水のなかで体を
ぶるぶる揺すって放子(卵でなく、赤ちゃんを放出)やわ。
なかには、新月の暗闇で産む「あまのじゃく」もおるけど。
人間様が月見団子をつまみながら、名月を眺めているときに、
カニは砂浜を大行進や。
私らは名前の通り、ハサミが赤く目の周りが黄色いカニやねんけど、
オスは甲羅に赤い線があるから、いっつも笑ってるような顔で愛嬌あるわ。
食欲旺盛で雑食、魚や動物の死骸、フナムシやゴミまで食べるよ。
とも食いもアリやね。寒くなったら、冬眠もする。そんなとき、
夢に見るのは、肺呼吸ができるようになり、ひとり旅で、のんびり温泉にでも・・・。
あっいや、ゆでガニになってしまうなぁ。